『わたと出会った日』それから、

『わたと出会った日』それから、

『わたと出会った日』それから、

 七年前の2014年10月15日朝、僕は『真っ白なわた毛』と出会いました…

『わたと出会った日』(2:40秒)




いつも出会いは突然なんです

 どこからか泣き声がするなと思っていると、とばりがテラスから隣の空き地を見下ろしています。
 一緒になって見下ろしてみると、灰色と白色の子猫が泣きながらウロウロとしていました。
 多分お母さんを探してると思ったんですけど、とばりの時もそうだった、母猫も食事をして帰って来ては子猫を咥えて引っ越して行く。
 下手に触って人間のニオイがつくと親猫が嫌がって帰って来ない、そんな話を聞いたことがないですか?
 そう思って、とりあえず見守ることにしました。
 少しすると鳴き声も止み、良かったー、と思っていたら数時間後にまた泣き声。
 その度にとばりと二人で見下ろしてとりあえず確認(笑)。
 その二人の内の灰色はちょこまかと走り回って元気なのに比べ、白い方はまだちゃんと目が見えていないのか、停めてある車のタイヤにぶつかったり塀に体当たりしたり、最後には駐車場入り口にある側溝の、コンクリートが割れて出来た穴から下におちたんです! 
 どうしよう、と少し見ていると自分で這い上がって出て来たのですが、心配にもなります。

 心配もしながらやどの事をやりながら、時々空き地を見下ろして夕方ごろ…
 なんと母猫(多分)が帰って来て、三毛猫でした、灰色を口に咥えて歩いていきました!
 『良かった~、これで心配せんでもすむし、あの子らもお母さん来てくれて良かった』
 そう思ったんです…

 とばりの時もそうでした、あの時は4兄弟を1匹ずつ口に咥えて消えていき3人目を運んで行って、帰って来なかったんです。
 いや本当はもっと長い時間待っていたら、ひょっとしたら…
 今でもそう思う事はあります。
 でもその時、自分の方に向かってヨタヨタと歩いてくるとばりを見て、
 『ウチの子になれ!!』
 そしてとばりとの生活が始まったんです。

 嫌な予感、なんてしたらダメなんですよね。
 この時もそうだったのかもしれません。
 兄弟も連れて行かれ、お母さんも帰ってこない…
 泣き叫びながらよく見えない目で走り回っていました。
 それを見下ろしながら、とばりと目が合ったんです。
 『どうする?』
 とばりは無言で僕を見つめ返してきて…
 僕は下へ降りて行きました。
 その白い子を連れて来る為に。
 薄暗くなる前に、雨が降って濡れてしまう前が良い、そう思って。



ようこそ、『わたつみ』

 真っ白なそのフワフワは、とても元気な男の子でした。
 その小さい身体でたくさん食べて走って遊んで寝て。
 もう、可愛くて可愛くて、里親を探すつもりでいたのですが、なかなか積極的に告知もせず、そのうちにこの子がいる事が僕ととばりにとって当たり前になって来たんです。


 ひと月も経った頃からか、名前を考えるようになりました。
 とばりの時はすぐだったんです、僕が夕暮れ時の写真を撮るのが好きだったので、すぐに名前は決まりました。
 でもこの白い子は、なかなか決められませんでした。
 どうしようかウンウン悩んでも良い名前は思い浮かばず、そんな時知り合いさんから『フワフワの綿毛みたいだね』って言葉をもらいました。
 そして色々考えていた中の海の神様のお名前『わたつみ』が繋がったんです。
 元気すぎて走り回る暴れん坊を予感させるこの子に、時に荒れ狂う海の、雄大な海の神様の様な、大きくて立派な子になって欲しい、そう願って。
 今にして思えば、本当に大きくて立派な暴れん坊になりました(笑)。
 『名は体を表す』って、あるんですね(笑)。

とばりにとっては受難の始まり、それでも…
 でもとばりにしては、なんだコイツは!?だったんでしょう。
 子猫を見るのも初めて、何をするにもついて来る、そして僕を、おとうさんを独り占め出来ていたのにこの白いのが…
 そう思っている感じでした。
 でも、それでもわたつみはとばりの事が大好きで、いつもくっついて後を追っかけて、側にいたがったんです。
 とばりもそんなわたつみを、とばりなりに可愛がり出してくれました。

 ある時、これはもっとわたが大きくなってから、半年を超えたくらいだったかの時、変な物でも食べたか調子悪そうに、大好きなごはんも食べに来ずぐったり寝ている時がありました。
 僕は掃除などをしながら『病院、連れて行こうか』など考えているととばりが通り過ぎて行き、その姿と一緒に何かが見えた気がしたんです。
 ちょっとイヤ〜な予感がしてついていってみると、わたが寝ていたベッドの下の向かいにとばりが座っています。
 そしてわたの目の前には、近所でよく見かける鳥がポツンと置かれていました。
 まるで『これでも食べて精でもつけな』、とお供え物の様に。
 鳥さんにはゴメンなさいと葬らせてもらいましたが、多分とばりはそうだったんです。
 勝手な推測ですけど、とばりはそんな子でした。
 身体が大きくなってきて、早くも4ヶ月を過ぎた頃には2kgを超えて、だんだんとばりよりも力は強く身体も大きくなって。
 小さい頃はちょっかいで済んでいたものも、そうなって来るととばりも大変(笑)。


 だんだんとわたを避けて一人でいる様になって。
 でも、ちゃんとわたの事を見てくれていたんです…


わたにとっては幸せの始まり

 わたつみは本当にスクスクと、元気に大きくなっていきました。
 写真を改めて見返していると、やっぱり小さな頃から手足が大っきかったんです。
 よく人の子でも言いませんか?
 『手足大っきいと身長伸びるよ』って?
 わたはそのパターンでした(笑)。
 今はだいたい5.6kg。
 少しお腹はタルンとしてますけど、身長がデカイ!
 他のみんなと並ぶと、ひと回りかふた回り大きいんですよ(笑)。
 そして筋肉質(笑)、ある人からはお尻や腰回りの様相を『横綱』って言われてました(笑)。
 ジャンプ力もすごいんです、押入れとかのさらに上に横長の引き戸ありますよね?その天袋まで、下からジャンプして手をかけてそのまま懸垂みたいにして無理やり上がってました(笑)。
 いたずらも大好きで、そしてとばりの事が大好きで。
 いつもちょっかい出しては怒られて、そのうちに目で殺されれるくらいに怒られていたのに、それでもわたはとばりが大好きだったんです。
 そんな、賑やかで楽しくて幸せな毎日が続いていたんです。
 わたにとっては、世界にお姉ちゃんとおとうさんと自分だけの、幸せな毎日が…


続く…